「これはペンです」英語の真相|教科書の謎と使わない理由
中学校の英語の授業で誰もが一度は耳にした「This is a pen.(これはペンです)」。英語学習の象徴的なフレーズとして日本人の脳裏に刻み込まれているこの英文ですが、実際の日常会話で口にした経験がある人はほぼ皆無でしょう。
「なぜネイティブは日常で絶対に使わないのか」「そもそもなぜ教科書の冒頭に長年君臨していたのか」——この疑問の背後には、英語のコミュニケーション構造と、戦後から令和にかけて変遷を遂げてきた日本の英語教育の壮大な歴史が隠されています。本稿では、言語学的アプローチと教育現場の変遷から、この伝説的一文の真実に迫ります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「This is a pen.」は文法構造(指示代名詞+be動詞+名詞)を最小限の語彙で教えるための人工的な構文であり、相手が見れば分かる事実を伝える不自然さから日常会話では使われません。
- 要点2:由来は幕末・明治期の語学書や戦後初期の文法中心主義にあり、2020年代以降の現行中学校英語教科書(改訂版)からはすでに姿を消しています。
- 要点3:ペンを貸し借りする際や文房具を確認する実際の現場では、「Do you have a pen?」や「Is this your pen?」といった機能的な表現が正解となります。
なぜ教科書の最初に載っていたのか?「This is a pen」の元ネタと歴史的背景
多くの日本人が「中学英語の最初のページに載っていた」と記憶している「This is a pen.」。その起源を遡ると、明治時代初期の英語学者・神田乃武らが編纂した初期の英語読本や、大正・昭和初期の検定教科書にまで行き着きます。
当時、日本人が英語を学ぶ主目的は「英米の学術書や文献を解読すること」でした。そのため、語学教育では会話の自然さよりも「文法構造の明瞭さ」が最優先されたのです。主語(This)+動詞(is)+補語(a pen)という「SVC第2文型」を、誰でも知っている身近な名詞「pen」を使って最もシンプルに提示できる例文として重宝されました。
戦後の検定教科書(『Jack and Betty』や『New Horizon』初期など)でも、文型導入のモデルケースとして踏襲され続けました。結果として、何世代にもわたる日本人の共通体験となり、メディアやコントのネタとして定着していったという経緯があります。

ネイティブが日常会話で「This is a pen」を使わない決定的な理由
言語学者やネイティブスピーカーの指摘によると、この文が不自然極まりない理由は「情報提供の原則(Grice's Maxims)」に反している点にあります。
人間が言葉を発するとき、基本的には「相手が知らない新しい情報」を伝達します。しかし、目の前にある筆記用具を指して「これはペンです」と宣言する行為は、相手の視覚情報を無視した無意味な発話となってしまいます。ネイティブがこのフレーズを口にするのは、以下のような極端なシチュエーションに限られます。
例えば「一見すると万年筆だが実は小型の録音機(ボイスレコーダー)」である場合、「This is not a weapon. This is a pen.(これは武器ではありません。ペンです)」と説明する場面です。相手がそれをペンだと認識していない特殊な文脈でない限り、通常のコミュニケーションで発話されることはありません。
【実態検証】歴代教科書の変遷と2026年現在の英語教育現場
文部科学省が改訂を重ねてきた学習指導要領において、英語教育の目的は「文法の暗記」から「実践的なコミュニケーション能力の育成」へと完全に舵を切っています。文部科学省の調査や主要教科書会社(東京書籍、開隆堂出版、三省堂など)の現行版を検証すると、驚くべき実態が浮き彫りになります。
| 年代区分 | 教科書の冒頭例文・導入スタイル | 学習目標・アプローチ | 教育現場の評価 |
|---|---|---|---|
| 昭和〜平成初期 | This is a pen. / That is a book. | 文型・文法規則の反復練習(Grammar-Translation) | 読解力はつくが話せない原因と批判された |
| 平成中期〜後期 | I'm Ken. Nice to meet you. | 自己紹介・挨拶などの基本表現重視 | コミュニケーションの土台作りとして機能 |
| 2024〜2026年(現行) | Hi, I'm Alex. I like anime. How about you? | 即時的な対話・双方向の意見交換・デジタル活用 | 実践的かつ自発的な発話を促す構成へ完全移行 |
現在の中学校英語教科書において、「This is a pen.」という例文は実質的に絶滅しています。小学校での英語教科化(3・4年生での外国語活動、5・6年生での教科化)を経て進学してくる生徒に対し、中学校の導入部は自己表現や質問のやり取りからスタートする構成が主流です。

発音と文法の基礎知識|指示代名詞の正しい使い方
文としては使われないものの、語学の基礎パーツとして「This」や「pen」を正確に理解することは無駄ではありません。
発音記号とネイティブらしい発音のコツ
「This is a pen.」の発音記号は /ðɪs ɪz ə pɛn/ です。
日本語話者がカタカナで「ディス・イズ・ア・ペン」と平坦に発音すると不自然に聞こえます。自然な英語のリズムでは、単語同士がつながる「リンキング(連結)」が発生します。「This」の語尾 /s/ と「is」の頭音 /ɪ/、そして「is」の語尾 /z/ と冠詞「a」/ə/ が滑らかにつながり、実際には「ディスィズァ ペン」のように一息で発音されます。また、破裂音である「p」をしっかり息を弾かせて発音することが明瞭さの鍵です。
英語の指示代名詞(This / That / These / Those)の基本ルール
英語の指示代名詞は、話し手と対象物の「物理的・心理的距離」によって明確に使い分けられます。
- This(単数・近い): 手に持っているものやすぐ目の前にあるもの(例:This is delicious.)
- That(単数・遠い): 相手の近くや離れた場所にあるもの(例:That looks great.)
- These(複数・近い): 手元にある複数のもの(例:These are my notes.)
- Those(複数・遠い): 離れた場所にある複数のもの(例:Those are mountains.)
日常英会話で本当に使うペン関連の実践フレーズ集
実際のビジネスシーンや海外旅行先で「ペン」に関してコミュニケーションを取る場合、どのようなフレーズを使うべきでしょうか。シチュエーション別の定番表現を紹介します。
1. ペンを借りたいとき(最も頻出)
- Do you have a pen I can borrow?(お借りできるペンはありますか?)
- Can I borrow a pen?(ペンを借りてもいいですか? ※カジュアル)
- Could you lend me a pen?(ペンをお貸しいただけますでしょうか? ※丁寧)
2. 落ちているペンや持ち主を確認するとき
- Is this your pen?(これはあなたのペンですか?)
- Whose pen is this?(これは誰のペンですか?)
3. ホテルのフロントや契約書でペンを渡すとき
- Here is a pen for you.(こちらのペンをお使いください)
- Please sign here with this pen.(こちらのペンでご署名をお願いします)
【プロの結論】「This is a pen」から学ぶ英語学習の失敗パターンと成功基準
「This is a pen」が日本人に残した最大の教訓は、「文法的に正しい英文が、必ずしもコミュニケーションとして成立するわけではない」という点です。語学学習において何を目指すべきか、学習アプローチの向き・不向きを整理します。
- おすすめできない学習法(旧来型): 文脈や相手の感情を無視し、単語の置き換えと文法パズルの解法だけに終始する勉強法。実践で言葉が瞬時に出てこなくなる原因になります。
- 推奨される学習法(実践型): 「どんなシチュエーションで」「誰に対して」「何を解決するために」発話するのかという場面設定(Context)とセットでフレーズをインプットする学習法。
【これ は ペン です 英語 で】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「This is a pen.」は海外で言っても全く通じないのですか?
A1:意味そのものは100%通じます。ただし、「なぜ当たり前の事実を唐突に宣言されたのだろう」と相手が困惑するか、ジョークとして受け取られる可能性が非常に高いです。
Q2:ペンを指して「これ何?」と聞かれた場合はどう答えますか?
A2:相手が何か分からず「What's this?(これ何?)」と尋ねてきた場合は、「It's a pen.(ペンだよ)」と答えるのが自然です。文脈上、すでに話題に上がっているため「This」ではなく「It」を受け皿にします。
Q3:なぜ「a」が必要なのですか?
A3:英語においてペンは「数えられる名詞(可算名詞)」であるため、単数の場合は不特定の1つを表す不定冠詞「a」が必要です。「This is pen.」と冠詞を抜かすと文法的な誤りになります。
まとめ:形式的な文法暗記から生きた英語へのシフト
「This is a pen.」は、日本の英語教育史における象徴的なランドマークであり、文法理解のための基礎モデルでした。しかし、現代の英語学習において求められているのは、知識としての正確さだけでなく、状況に応じた適切な言葉の選択です。
教科書が対話重視へと進化した現代、私たちが目指すべきは「正しいけれど使わない英語」を暗記することではなく、「相手に届く生きた英語」を使いこなすことです。ペンをめぐる素朴な疑問をきっかけに、実践的なコミュニケーションへの第一歩を踏み出しましょう。 (出典: これ は ペン です 英語 で(Yahoo!ニュース))